茨城大学 工学部 生体分子機能工学科


教員の研究


准教授  福元 博基
電子・光機能性π共役高分子の研究
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 ポリアセチレンに代表されるπ共役高分子では、π電子が高分子鎖に沿って非局在化するため、導電性・発光特性など低分子には見られない電子・光特性を発現します。これらの特性は高分子一本鎖の性質だけではなく、むしろ多数の高分子鎖が集積した際にできあがる固体構造と密接な関係があります。特性の向上には、非局在化しているπ電子系をいかに二次元、三次元に秩序よく積み上げることが鍵となります。そのためには、高分子主鎖の平面性を高め、かつ側鎖の伸展方向を揃える、すなわち、モノマーユニットを規則正しくつなげる必要があります。
 本研究室では、π共役分子を合成化学的に規則正しく結合させる方法を開発し、得られたπ共役高分子の機能性について研究しています。

(1)Grignard中間体を鍵とする位置規則性π共役高分子の合成と固体構造
 3−アルキルチオフェンの2,5位にハロゲンが結合した化合物は、亜鉛化合物と反応するとチオフェンの5位にのみ亜鉛が挿入した中間体が得られます。パラジウムなどの金属触媒の添加により、ほぼ頭尾(Head-to-tail, HT)結合のみのポリ(3−アルキルチオフェン)(HT-P3RTh)が得られ、「End-to-End」型の秩序構造をとります(Yamamoto, T. et.al.,J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 2047)。しかしながら、この合成法はピリジンなど含窒素芳香環には適用できません。
 本研究では、6−アルキルピリジンの2,5位に臭素が結合した化合物に、亜鉛の代わりに有機マグネシウム試薬(Grignard試薬)を反応させると、5位の臭素がマグネシウムに置き換わった「Grignard中間体」をほぼ定量的に得ることを見出しました。この「中間体」に金属錯体触媒を添加すると、ほぼHT結合で構成されるポリ(6−アルキル)ピリジンが得られ、その個体構造を解析した結果、これまでにはみられなかった「End-to-End」と「Interdigitation」の二つの配向様式の繰り返しからなる珍しい秩序構造をとることを見出しました。Grignard試薬はピリジン以外の含窒素芳香環にも適用できることも明らかにいたしました。

(2)π共役チオフェンオリゴマーの配向・配列と電子・光特性
 π共役オリゴマーを構成するユニットの種類・個数が全く同じでも、それらの結合の順序が違えば、全く異なる特性を示すことが予想されます。例えば、チオフェンとピリジンからなるコオリゴマーはクロスカップリング反応を巧みに利用することで、チオフェンの3、4量体の両端をピリジンでキャップしたAタイプ(5a, 6a)とチオフェンとピリジンが交互に結合したBタイプ(5b, 6b)に作り分けることができます。
 サファイア基板(0001)上に5aならびに5b(膜厚1800-2300 Å)を真空蒸着によって製膜し、XRD測定を行ったところ、5aではチオフェンコアがほぼ平面でかつ分子集合体全体のπ共役系が保たれていることがわかりました。そのため、p型の電界効果型トランジスタ(FET)特性を示すのに対し、全ての芳香環がねじれて結合している5bは共役系を保てないため、FET特性を全く示さないことがわかりました。ユニットの種類・個数・結合順序のわずかな違いがπ共役分子の分子構造すなわちπ共役電子系に与える影響について明らかにしたことが言えます。


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